私が成人アトピーに突然なったとき【息子にアトピーとのつきあい方を教わる】

それまで皮膚が弱くても、かぶれやすくても、明らかにアトピーではなかった私が30歳を過ぎてからはじめてアトピーを発病し、生まれた時からアトピーの息子の当時の主治医も、私がずっとそんなことはなかったことを知っているからなおのこと、「その年令で突然発病するのは非常にまれなケースです」と苦笑しました。

とにかく猛烈に痒みが続いて、どうしようもありませんでした。

息子が掻いているとイライラしていたけれど

息子が掻きむしっているとイライラしましたし、血だるまになって転がっていると、「どうしてそんなになるまで掻くの！」とつい怒りだしたこともしばしばありました。

なってみないとわからない強烈さでした。まるで本能のように、掻かずにはいられません。頭がおかしくなりそうです、あまりの痒さに。実際気持ちも落ち着きません。

掻きたくないのに掻かずにはいられないジレンマに、気持ちがささくれてきます。
ひとりでイライラしているつもりでいた私ですが、反抗期にさしかかろうとしていた長男が、あるとき、すーっと手を伸ばしてきて、私が掻いていた腕をポンポン優しく叩いて、「そんな掻き方しちゃダメだよ、加減しなくちゃ」と諭してくれました。

やさしい顔で、まるで私のほうが聞き分けのない子供になった気がしました。

あっけにとられて、つい、「加減」と口走った私に、「俺が何年アトピーと付き合ってきたと思ってるの、悪くならずにすんで、うまく痒みをごまかすには掻き方がちゃんとあるんだよ」といいだしました。負うた子に教えられという格言が頭をよぎりました。

寝ている時ならいざしらず、起きていて、意識がある状態ならば、上手に痒みにつきあう努力も必要だとティーンエイジャーになったばかりの息子に今更ながらに教わりました。

長男も大きくなっていたので、子供の負担になるから、その頃私はなるべく構わないようにしていましたが、それからしばらくは息子をそれとなく観察してみました。

長男が顔などを掻くとき、爪ではなく指の腹で、それもなるべく皮膚の表面上を優し目に掻くように心がけているように思いました。少しであれば跡がのこらない程度に軽めに、掻いているというより表面をシャカシャカさすっている感じです。

血が出るまで掻くようなのは、もっぱら意識のない寝ている時などでした。
シャカシャカさするように掻いてもダメなときは水で洗うとか、工夫もしていました。

息子に教わる

私は長年アトピー児の母親をやってきていましたが、息子は長年アトピーを患ってきただけに、アトピーと上手に付き合うすべを自分自身でも模索してきたのだと、実感しました。

見ていた自分も苦しかったけれど、本人がそれ以上に苦しくなかったはずはないことを今更ながらに思い知った気がしました。

突然なった成人アトピー、ならなければそんなことにも気づけなかった私ですが、気づけてよかったと思いました。